世論調査のつくられ方や「次の首相」調査の意味を説く2つの論文を読むことで、選挙を分析する手段としてしか見られない傾向がある世論調査について深く考えた。
(1) 吉田貴文「第1章 世論調査はどうやってつくられているか」『世論調査と政治―数字はどこまで信用できるのか』,講談社,2008年
(2) 菅原琢「第5章 作られた「人気」―「次の首相」調査の意味」『書名未決定』,光文社,2009年(近刊)
(1)
日本では、電話・面接・インターネットを通じて年に1218回もの世論調査が行われているが、同時期に行われた調査であっても結果に相当違いがあることに留意が必要だ。質問内容には、国民が興味があり、冷静な反応ができそうで、更に質問するだけの意義がある必要がある。一方調査質問文・選択肢の作り方一つで結果が大幅に異なることもあり、慎重な作成が求められる。特に国民の間で認知度が低い問題では、質問文自体が学習効果を持つ為、誘導にならぬ様に注意しなければならない。ただ防犯意識の高まりなどから、調査の回収率は低下し続けており、調査の信頼性が低下していることは否定できない。以上の様な問題点を抱えるが、世論調査には社会の一面を示すという効能もあるので、自ら結果を批判的に取捨して、判断の材料としていくべきだ。(長坂)
(2)
「次の首相」調査には現代の日本における世論と政治のヒントが隠されている。自由回答式か選択式か、選択肢の内容、文言の差で大きく異なる。自由回答式と選択式の回答分布の差から世論は若年層によって左右される傾向があるのが分かる。この動向を気にして政治家がリーダーを選ぶようになったからリーダー選びが失敗している。(石川)
インターネットによる調査は、謝礼目的の登録者(主婦・学生など)が多すぎて補正が効かないなどの問題点はないのか。
→有権者、国民から、ネットやニコニコ動画や登録系のものを見ている人、というバイアスがかかり、よく見ている人とあまり見ない人との差もあるので、もはや世論調査ですらない。
世論調査の結果が各社で違うのは、その新聞社の論調に合わせて答える人がいるからであるのではないかという言説について、新聞の論調をわかっている人がどのくらいいるのか疑問である、確かめるためには読売新聞が「朝日です」と言って調査すればよい、一つの新聞社の調査だけを調べるのではなくいろいろ読み比べればよい、などの意見が出た。
前回、前々回と違って選挙そのものではなくその調査について考えるということで興味深くなった。議論中も自主的な発言などが飛び出し楽しかった。(津田)