第9回ゼミ 「二院制 」 (2007/12/12)

▽授業概要

二院制の是非について意見の違う文献を二つ講読し比較した。

▼課題文献

「「日本型分割政府」と参議院の役割」竹中治堅

『年報政治学 2004』(岩波書店、2005年)

「 第 2章 無意味な二院制 」 福元健太郎

『立法の制度と過程』(木鐸社、 2007年)

▼文献要約

「無意味な二院制」

衆議院と参議院の、議員構成や法案審議に関する審議を行い、衆議院が参議院の違いの小ささを示した。その上で、さまざまな意図を持ったであろう衆議院と参議院の制度の違いは審議の過程に違いを生み出していないので、現状の二院制は同じ議論を二度繰り返すだけで無意味だとした。

▼質疑応答例

・p.131「審議機関の不足が後議院を不活発に」する。p.133「先議院が 後議院に法案を送付するのが遅いほど、真偽活動を活発にしている」と ある。では結局どうなのか?

→双方、分析で有意な結果を得ているから 、分析においては双方正しい。ただ注意してみると、その係数がとても 小さい。よって実質的な意味合いがそれほどあるとは思われない。これを回答とする。

・重要法案が衆議院に先に送られるのは、衆議院だからなのか、それとも他の要因が働いて慣例的なのかわからない。

・これらの文献で示されていないが、郵政選挙のことを考えると、参議 院の政権形成への影響力はなくなったというべきか?→連立政権は解消 していないので、いまだあると言えよう。

▼全体討議

1. 両文献は、参院の意義について国会審議に注目しているが、たとえば選 挙、補完的な役割など他の働きについても議論するべきである。 シニアが求めれる参議院としているが、自衛隊の支持を得る議員、タレ ント議員など、参議院で別の独自性を持っている議員もいるであろう。また自民党で活躍する参議院議員の立場の議員もいよう。

また事実とし て、審議において議会に重みがあるわけではない。法案形成過程でまだ 見えていない側面もあろう。

2. まず二院制不要論と参院不要論が異なるものであることを認識したい。 二院制が不要だということだけならば参院でなく衆院を廃止することも 考えられるからである。 つぎに二院制について、本ゼミでは意義があるという方向に議論が向か った。

一番の理由は、政権にたいする懐疑である。日本は議院内閣制を とっているため、議会の与党と政府の長の意見は原則として一致するこ とが想定される。すると一院制だとすると、選挙において一党が独占的 なほどの議席を確保した場合、議会と政府のチェック&バランスが行わ れるのか疑わしい。二院であることは、選挙による行きすぎ、国会議論 における行きすぎという極端な政治決定を予防できるであろう。

現段階で参院を廃止してしまうだけならば(それが経費削減を主な理由として あげるなら財政しか見ていないともいえ)、我々は将来への不安を抱かざるを得ないのである。郵政選挙について参院不要論があるが、これは文献のなかにあった法案審議権による首相への参院のけん制に対する首相の対抗手段として「民意を問う」という行動であり、チェック&バランスにかなうものである という解釈も可能。また参院自体は自立を保ったが、自民党参議院議員 の態度の変化だという解釈も可能である。

▼今日の授業

参院不要論はしばしば聞かれる議論である。しかし「改革」であるから といって即座に受け入れてはならない。議論を尽くした上で、よいなら ば採択し、悪いなら排除する。二院制という制度について存在意義をかんがえるにあたり一つは、政治はたしかに民意を反映すべきであるが、それにはブレーキをかけつつ慎重さを失ってはならないということであろう。多数決で少数意見を無視してならないのは、20世紀に我々は民衆の熱狂的支持を得たが、今となっては非合理といえる政策をとった政府を経験したからである。 (鈴木)