第4回ゼミ 「自民党議員の政策関与1―中選挙区時代」 (2007/11/07)

▽授業概要

自民党の部会の影響力について理解を深めた。

▼課題文献

「4章 自民党政務調査会と自民党議員」猪口孝・岩井奉信

『「族議員」の研究』 pp.98-152より(日本経済新聞社、1987年)

▼文献要約

「4章 自民党政務調査会と自民党議員」

中選挙区制の下では政務調査会、その中でも特に部会が個々の議員の重層的利害関係の調整の場として重要な位置を占めていた。そして個々の議員はフダとカネ、つまり選挙での支持と政治資金の調達と関係の深い人気部会( 建築、農林、商工 ) に所属し、発言や政策研究を通じて部会、委員会の役職獲得をし、そのキャリアパスを背景にして族議員への道を歩んでいったのである。

▼質疑応答例

・中選挙区制から小選挙区制に変わったことで部会にも変化がでるので はないか?

→現在、2種類の変化が予測されており決着はついていない。 同選挙区の議員との関係がなくなり人気部会に拍車がかかるorどの族に なっても再選できるので部会の選好が多様になる。

・p.140 図4-6の意味は?

→複数のものに関し似ている度合いをキョリに 直してあらわしたもの。

・p.147 図4-5から本文の結論(「御三家」部会が特に強い)を導くこと はできそうにないが?

→まずこの表を疑ってかかれる。例えば83年を扱っているが、その前の80年選挙は自民党が大勝して、その反動で前回実力不相応で当選した議員が落選し、そういった議員は自然都市部が多く 「御三家」以外に所属していたため表のデータが出たともいえる。

・本文の、委員長人事が与野党間の争点となる、という主張はどうしてか?

→自民党政調部会が政策的な争いの場であり、委員長は議事につい ての権限をもっているため、重要法案を通すために政治的腕力に長けた人が抜擢されることがあるという意味であろう。

・部会ではなく委員会のほうが、インターネットの普及なども考慮する と、有権者に見えやすく人気がでて権力が増してくるのではなかろうか ?

・部会への明確な所属は消えてきているが、部会内&新たな利益を開拓 していく動きが見える。

・参議院議員が衆議院議員と違った部会への選好をもっていたため(国防は参院全国区では影響があった)、互いの議員がカバーしあって政策 を決めていたともいえる。

▼全体討議

(1) 族議員はこれからも残るであろう。抜擢人事の出現で、部会で認めら れることが出世につながった安定的システムが(善し悪しは別として) 崩壊していく恐れはある。よって部会の影響力は弱まるだろうが、やはり官邸と自民党、官邸と官庁の間で利害調整をとりおこなえる人材が必 要となってくるからである。

(2)・より選挙区よりになるやもしれない。TVなどにでて受け狙いをするか もしれない。

・ いわゆるイギリス型化する日本政治が考えられる。即ち個々の議員 に差異はあまり見られなくなり、政党の政策を本意にした選挙が行われ る。また、中央のためによい働きをした政治家が有望となる。他方、利益誘導のため中央にとりいる(また利益集団がとりいらせる)議員が出てくるかもしれない。これはイギリスと比べて官邸と政党の 関係において以前政党に力があるから起こりうる。

▼今日の授業

ゼミメンバー全員、馴れ合ってきたように感じています今日この頃、全 体議論は前期に比べ(スタンドプレーかもしれないけど)質があがっているのではないでしょうか? 油断も気になるところではありますが。(鈴木)