第3回ゼミ 「 自民党の組織原理 」 (2007/10/31)

▽授業概要

日本の政党について、戦後の歴史を追いながら学んだ。

▼課題文献

「シニオリティ・ルールと財閥―自民党における人事配分の変化」川人貞史

『レヴァイアサン』臨時増刊号(木鐸社、1996年)

▼文献要約

議員が当選回数という基準にのっとった明瞭なパターンに沿って役職を歴任し初入閣に至るという シニオリティ・ルールは、自民党長期政権化による議員経歴長期化に対応するものであり、派閥対立を反映して主流派優遇人事と併せて適用された。その後このシニオリティ・ルールは 過剰入閣待望者数の解消とともに主流派に限らず全党的に適用されだし、そのため各派閥の所属議員数に応じた役職配分を行う派閥勢力比型人事が必要となった。さらに70年代の保革伯仲と党内の5大派閥への整理によって、主流派優遇人事の可能性をなくなった。現在に続く自民党の組織及び運営の特徴はこうして成立した。

 

▼質疑応答例

・参議院の存在は?→参院から衆院にうつる人には大物(元知事など)がいるため彼らが当選回数が少なくても入閣している。

・最小勝利連合とあるが、全員が主流は志向で最小になるのは難しいのではないか?→たしかに。理論的には最小を目指すが、現実問題そうならない場合がある。

・p.126の「信用供与」とは何か?→将来的ポスト配分。(役職の約束)

・p.119「将来の敵を作らない」→反主流派の存在も考慮し、お互い仲良くしようという態度のこと

・本稿ではポストの数しか考慮していないが、重要なポスト・そうでないポストがあるのではないか?→入閣までがシニオリティ・ルールに相当する(ので考慮は数まででよい)。重要な役は実力次第ということになる。

・ポスト数は上位になるほど減少するが?→p.112 ・図5からp.136の話をもってきているが、正しいか?→主流・反主流で母集団がわからない。

・この論文の特徴→連合の理論+自民党の構成を考慮することにより派閥均衡人事およびシニオリティ・ルールのなりたちを説明している。ただ、派閥の整理などが言われているがそれも議員が主流派をめざすなかでの話であるから、包括的に研究できているとは言いがたい。

▼全体討議

・現在従来の人事慣行が崩れているのは、派閥調整人事をせず不満が議員の中にあっても、(特に小泉では)国民の支持があったために反発することができない(国民と意見が異なってしまうため)。そして自民党は党内にリスク(不満な議員の反骨可能性)を残しても衆院多数を確保できることを選んでいる。

 そしてそのリスク(=離党&野党と連合、自民党の政権喪失)に関しても、小選挙区になったことなどから、幹部が直接的な影響力を各議員に持つようになったからである。つまり離反しても別候補を公認して離反議員を脅かすなどのことも可能となった(2005年総選挙の「刺客」候補を見よ)。  小泉でこのようなことがあったが、安倍(特に参院後)は派閥の力をつかわずに勝てる可能性が減少・喪失したため派閥を考慮せざるをえなくなったといえる。

<利点>

1.小泉後、閣僚人事は首相のトップダウン色が強い(参院後安倍でも派閥の領袖自身が選ばれるなど派閥の要望ではなく首相による派閥考慮である)。

2.民間人登用は、都市無党派層の要望に沿っている。3.党執行部による人事登用ができる。適材適所など。

<欠点>

平議員は将来の役職を期待して自民党に忠誠を誓っていたともいえるし、また目標を定めやすかった。 1.離反議員増加の可能性。2.後援会のインセンティブ低下。3.党内で政治的実力(霞ヶ関とのパイプなど)を蓄えることが不可能。ハデであったり、リーダーと近しかったりすることが重要となる人事となる危険性。

▼今日の授業

菅原ゼミのもう一つの特徴(魅力)である数量的な政治学が動き始めます。今日は軽くエクセル講習を、基本的な使い方を生徒全員で認知するところから1時間。先生の教授意欲は授業時間枠に収まりきらないようです、、、。 (鈴木)